ArkEdge Space Blog

株式会社アークエッジ・スペースの技術要素多めのブログ

ハードウェア系新入社員は衛星スタートアップ企業でどうはたらいているの?

こんにちは.株式会社アークエッジ・スペース(以下,AE)のハードウェア設計をしている多々良です.
私は今年6月からインターン,10月に入社した新入社員です.今回は私のような新入社員が何をしているかを紹介したいと思います.

自己紹介

まずは,私の自己紹介を簡単にしたいと思います. 現在,社会人博士として,大学院生をしつつ,働いています.

人間としての私

大学院生の私

  • 学年:博士後期課程2年(2022年現在)
  • 専門分野:膜面展開構造物(ラップのような薄い膜で構成されている,小さく折り畳まれた状態で打ち上げられ軌道上で展開する構造物)の設計・軌道上挙動予測

AEでの私

  • 所属部署:生産基盤部
  • 担当:構造設計エンジニアとして,衛星構体・衛星ミッション機器を設計(詳細は後述)

AEに入社したきっかけ

私は衛星の構造を専門とする研究室に所属しており,自身の学位研究の一環として,衛星開発プロジェクトに参加しています.そのプロジェクトでは,これまで自身が行ってきた膜面展開構造物の研究に関連したミッション部の設計を担当することになりました.最初はミッション部である膜構造部の設計だけをしていましたが,それだけではなく衛星本体とのインターフェース調整が必要な設計フェーズになってくると,より上位の視点が必要になります.例えば,
「どこから電力もらうのか?」
「膜構造部と衛星本体との熱の授受ってどうなっているか? 壊れたりしないか?」
「そもそもどうやって衛星本体と取り付けるか?」
といったことが議論に上がるようになっていきました.

そこで,私はこう思うようになりました.
「ミッション部や機構部の設計はしてきた(している)ものの,衛星システム全体のことはあんまり知らないかも.」
「衛星システム全体の設計を学ぶには,超小型衛星を製造している企業等で,自分で手を動かすのが一番の近道かも.」

プロジェクトのためにも,すぐさま手を動かすべきだと思い,インターネットで調べました.
調べてみてわかったことは超小型衛星をコンポーネント単位ではなく,システム全体の設計をしていて,かつ学生をインターン生として,受け入れてくれる企業があまりないということです. 衛星は技術情報の塊なので,インターン生を積極的には採用したくないという企業側の気持ちもすごく理解できます.

AEは東京大学中須賀・船瀬研究室発のスタートアップであり,アカデミックでソフトウェア指向な風土がありました.そのため,「設計思想等は可能な限りオープンソース化することが重要」と考え,学生の受け入れを積極的に行っていました.自由な社風で,私が学びたいこともできそうだと思い,Web採用応募フォームから応募をしました.

採用面接を何度か行い,インターン生になりました.
採用面接で最も印象に残ったのは,
「AEでは,自分で課題や問題を見つけ,そしてその解決方法も自分で見つけていくことを求めます.インターン生といえども,これがAEのカルチャーです.もちろんサポートは惜しみなくしますが,それでも大丈夫ですか?」
という質問でした.大学の研究室っぽいなと思いました.大学院生として3年以上アカデミックな環境にいた私は,これまでそういう環境にいたので大丈夫ですと答えた記憶があります.

インターン生として与えられた仕事は,アンテナ機器を0から設計することです.0からの設計は自由度が極めて高いので,すごく大変です.しかも,短期間で設計を固めてほしいということで,時間のない中で考えないといけないという状況でした. しかし,自由度が高いのは悪いことではなく,自由度が高いからこそ自由な発想で設計ができるということで,やりがいや楽しさがあります.これを進めていくうちに,インターンの所定労働時間を超えて,業務を頑張りたいと思うようになりました.

上長の高橋さんに相談したところ,それまでの設計業務の結果を評価いただいたためか,「業務に責任をもって働き続けられるのであれば,社員として是非AEで働いてほしい!」といわれ, そのまま社員になりました.インターン生から社員になり,業務内容は変わりませんが,いい意味で責任を感じながら,働いています!

AEでの業務内容

前述の通り,アンテナ機器の設計を行っています.超小型衛星もスマホなどと同じく,高速通信が求められており,そのためには高利得のアンテナが必要になります.しかし,高利得のアンテナは相応にして大きく,さらに

  • 打ち上げ時の振動で壊れないか.
  • 打ち上げ時の振動で誤動作しないか.
  • 軌道上(真空,無重力環境)できちんと機能するか.

を満たす必要があります. これらをクリアし,「超小型衛星(2リットルペットボトルくらいのサイズの衛星)に搭載できる高利得アンテナ」を設計,解析して,3Dプリンタを活用した地上検証モデルで実際に機能するか検証します.この検証がうまくいった場合,実際にフライトモデルを製造し,実証まで行う予定です.

「高利得化のため,大きくなければならない」×「超小型衛星に搭載できるほど小さくなければならない」という要求が完全にバッティングしており,高利得の大きなアンテナを 超小型衛星に乗るサイズにまで小さくできるかというところが本当に難しかったです.いろいろな種類のアンテナの中から高い利得が得られるもの,配置等の工夫で超小型衛星に マッチするものを選び,ようやく概念設計ができてきたところです.

3Dプリンタでの作製物(ちら見せ!)AEとして重要なコンポーネントの一つになりうるので,構造,通信等,様々な観点から社員の方々にレビューをもらいながら行っています.

↑(左)今日も3Dプリンタは稼働中(右)開発室.今は3Dプリンタ以外はないですが,これから様々な試験・検証ができる環境にしていきます!

私は構造が専門で,アンテナ工学や無線工学の知識は全くありませんでした.インターン生としてAEに入社し,業務をこなす中でそれらの勉強を始めました.設計業務を行うなかで,その他のわからないこともたくさん出てきますが,日々の業務の中や社員の方々とのコミュニケーションの中で身につけています.

今はアンテナ設計をしていますが,今後はアンテナ設計といったコンポーネント設計に加えて,量産の予定される超小型地球周回衛星の内部機器配置,超小型深宇宙探査機の構造設計も行っていきます!!
また,私は生産基盤部に配属されながらも,通信事業部などとも連携して業務を行っています.部署を超えた横断的な業務が可能であり,衛星システムレベルを俯瞰することができる,というのもAEの強みです.

結び

新入社員の私の業務内容をざっくりとですが,紹介しました.まだまだ修行中の身だと感じることも多いですが,いろいろな知識を吸収して世界トップクラスの衛星エンジニアになれるよう精進します!
また,もともとこのブログはソフトウェア部が主導で行っていましたが,ハードウェアエンジニアの我々も積極的に発信していこうと思います.
それでは,またの機会に!

「衛星設計を実践的に学びたい!」という意思の強い学生の方,ぜひ弊社でのインターンをしてみませんか?
株式会社アークエッジ・スペースは積極的な採用活動を行っています.