ArkEdge Space Blog

株式会社アークエッジ・スペースの技術要素多めのブログ

39th Annual Small Satellite Conference 参加レポート

コンピューティング基盤部の三吉(sankichi92)です。

8/101 から 8/13 にかけて米国ユタ州ソルトレイクシティで開催された 39th Annual Small Satellite Conference に参加しました。 この記事はその参加レポートです。

アークエッジ・スペースからは私含め4名が参加し、ジャパンブースの一角をお借りしてブースも出展しました。 私は今回が初参加で、地上システムやソフトウェア関係の情報収集が主な目的でした。

Small Satellite Conference とは

Small Satellite Conference(以下、SSC)は、小型衛星に関する世界最大級の国際会議です。 講演やポスター発表だけでなく、大規模な展示会も併催されており、その出展数は400件近くにのぼります。 参加者は、1300の組織、45の国から4000人と言われています2。 昨年まではユタ州立大学で開催されていましたが、今年は規模の拡大に伴い、ソルト・パレス会議場での開催となりました。

エントランス

ブース会場。これでも半分

ジャパンブースへの出展

アークエッジ・スペースも、一般財団法人宇宙システム開発利用推進機構主催のジャパンブースに参加する形でブース出展しました。 多くの方々にお立ち寄りいただき、準備していたノベルティがほとんどなくなるほどの盛況ぶりでした。

ジャパンブース内の当社ブースと参加メンバー

地上システム・ソフトウェア関連の発表

以下、私の印象に残った発表等を紹介します。

口頭発表は、Enterprise Track と Research & Academia Track の2トラックがあります。 地上システムに関しては、"Ground Systems" と題した Enterprise Track のセッションが最終日 8/13 8:00-10:00 にありました。

冒頭の「Telemetry Handling & Extensible Satellite Environment for a Unified System (THESEUS) for the Operation of ONGLAISAT」は、東京大学中須賀・船瀬・五十里研究室の発表です。 タイトルの衛星 ONGLAISAT は当社も共同開発に参加しており3、筆頭著者の下村さんは当社でもインターンをしています。 この発表で提案された THESEUS は、従来の地上システムをマイクロサービスアーキテクチャへとリアーキテクトしたもので、個々のサービスを高度にモジュール化することで、多様なミッションに柔軟に対応できるようにしたとのことでした。 THESEUS には、当社が OSS として公開している gaiakble が使用されています。

THESEUS の発表の様子

Modernizing SmallSat Mission Operations: Integrating AI-Driven Optimization With Cloud-Native Control Systems」は AWS の発表です。 Cognitive Space の CNTIENT.Optimizeオープンソースの衛星管制システムである YamcsAWS のサービスと共に組み合わせることで、スケーラブルな衛星運用を実現するという内容でした。 我々も AWS 上で動作する管制システムを内製しています4。 とはいえまだまだ規模は小さいので、このセッションで提案された Cloud Mission Operations Center のアーキテクチャ例は今後の参考にできそうだと感じました。

SSC には、口頭発表とは別に、企業・組織が自由なテーマで参加者向けに主催する「Side Meetings」もあります。 口頭発表が15分であるのに対し、Side Meeting の時間はもっと長く、進め方も主催者に裁量があります。

Side Meetings 会場入り口

「An Introduction to Command and Control with OpenC3 COSMOS」と「Rocket Lab End-to-End Space Software Demo」は衛星管制システムの実際の UI を表示しながらのデモでした。 前者はコア部分がオープンソースとしても提供されている OpenC3 COSMOS のデモ、後者は Rocket Lab が開発する MAESTRO や INTERMISSION のデモです。 他の衛星管制システムを実際に操作するシーンを見ることはなかなかないので、いろいろと驚きや発見がありました。

「SmallSat Open Source Space Meetup」はその名の通り、小型衛星界隈のオープンソースプロジェクトのミートアップです。 参加者からも募りながら、小型衛星に関する様々なオープンソースプロジェクトが紹介されました。 ミートアップ自体は4回目ですが、今回初めて Web ページを作成し、メーリングリストや Discord 等でコミュニティを形成していくとのこと。 オープンソースのツール「だけ」でミッションを可能にするというテーマのディスカッションでは、会場が非常に盛り上がっていました。

おわりに

初めて SSC に参加して、学会でありながら至るところで商談が行われているのが印象的でした。 参加する組織も発表の内容も非常に多岐にわたっていて、宇宙産業が「総合格闘技」と言われるゆえんを身をもって実感できたように思います。

宇宙産業、また、当社で働くことに興味を持っていだけた方は、ぜひ以下の採用ページからご応募ください!


  1. 8/10 は講演等はなく、展示の準備や一部の Side Meetings のみだったため、8/11 から参加しました
  2. https://www.gpsworld.com/smallsat-conference-heads-to-salt-lake-city/
  3. https://arkedgespace.com/news/2025-02-07_onglaisat
  4. 詳しくは当ブログの記事「衛星管制システムとは何か」を参照ください